Copilot+ PCの広がりによって、AIによる働き方や日常生活の改革がいよいよ本格化してきたようにみえます。
Copilot+ PCと従来のPCの大きな違いは、AI処理を高速かつ省電力で行える専用のプロセッサー「NPU」を搭載している点です。
現状のAIの心臓部はクラウド上にありまして、それをパソコンで接続して利用する形態なのですが、NPUの登場によって、パソコンや自社内のサーバなどの閉じられた環境でAIが利用できるようにシフトしつつあります。
この変化で得られる様々なメリットによって、AIはさらに浸透していくことが期待されます。得られるメリットに関しましては、記事内で解説しております。
AIは現代社会の情報過多や作業効率化への課題などを解決してくれることが期待されますが、障壁があって使えないと全く意味がありません。
NPUを搭載したCopilot+ PCは、その障壁を取り除く特効薬になる可能性を秘めていると思います。
本記事では、Copilot+ PCの今後の可能性について、AIの世界に入りたての方にも分かりやすく解説したつもりです。
Copilot+ PCの理解を深めるためにお役に立てれば幸いです。
Copilot+ PCとは何か?

Copilot+ PCとはMicrosoftが提唱している新しいタイプのパソコンのことでして、NPU(Neural Processing Unit)を搭載したAI PCのことをいいます。
NPUは、AI処理を専門に行うプロセッサーです。
AIに特化したプロセッサーをパソコンに内蔵することで、AI処理のパフォーマンスを大幅にアップさせることが可能になりまして、より現実的なAIを手にすることができるようになります。
なぜCopilot+ PCが必要なのか
ChatGPTやGeminiなどのチャットボットや画像生成AIなど、現在利用されているAI機能のほとんどは、クラウド上にあるAI処理を行うサーバにデータを送信して、その結果を得ています。

とてもお手軽に使えて良いのですが、いくつか問題点が存在します。
現在のAI機能の問題点:
- インターネットを介するため遅延が発生しやすい
- データを外部に送信するため情報漏洩などセキュリティへのリスクがある
- AIシステムを自分専用にするための自由なカスタマイズができない
などなど
特に、2番目のセキュリティへのリスクに関しては、思いっきりAIを利用できない大きな原因になっているのではないでしょうか。
これらの問題点をクリアにするために、Copilot+ PCが登場しました。
Copilot+ PCがもたらすメリット:
- AI処理はパソコン内で行われるためインターネットを介する頻度が減る(→パフォーマンスが改善する)
- AI処理のためのプライベートなデータを外部に送信しないため情報漏洩などセキュリティへのリスクが低減される
- AIシステムを自分専用にするためのカスタマイズが可能
AIシステムのアップデートなどでインターネット接続は必要ですが、利用者が入力するデータはパソコン内で処理されますので、パフォーマンス的にもセキュリティ的にも有利になります。
従来のPCとCopilot+ PCの違い
今までのNPUが搭載されていないパソコンでも、パワフルなCPUや超高性能なGPUなどを利用してAI処理を行うことは技術的には可能でして、実際に行っているソフトウエア(Photoshopなど)もあります。
でも、CPUというのは、AI処理に限らず汎用的な処理を行うように設計されていますので、多少なりともパフォーマンスに問題が出てきます。
一方、超高性能なGPUはAI処理を高速に実行することは可能です。しかし、そのために必要な電力消費はかなり多くなります。
デスクトップパソコンでしたら、まだなんとかなるかもしれませんが、ノートパソコンの場合はバッテリー消費が致命的な状況になりがちです。
NPUはAI処理を超高速に、且つ消費電力を低く行うことができるように作られていますので、CPUやGPUが苦手な部分をクリアにしてくれます。
Copilot+ PCの要件
Microsoftが策定したCopilot+ PCのシステム要件は、以下の通りです。
Windows 11 の最小システム要件に加えて、
- 1秒あたり40兆以上の操作 (TOPS) を実行できるNPUを搭載
- 内蔵メモリはDDR5/LPDDR5規格で16GB以上
- ストレージ容量は256GB(SSDまたはUFS)以上
※1TOPSは1秒あたり1兆以上の操作行えるということ
※UFSとはフラッシュメモリの規格のこと
内蔵メモリのDDR5/LPDDR5規格は、最近の機種にはほとんど搭載されていますので大丈夫でしょう。念のために規格と容量を確認しましょう。
ストレージ容量に関しましても、最近のほとんどの機種が256GB以上のSSDを搭載しています。
最も重要なのは、やはりNPUですね。
2024年9月末にIntelから40TOPS以上の性能のNPUを内蔵したCPUが発売されまして、IntelとAMD、最近はQualcomm社のSnapdragonも含めた3大CPUメーカーの製品が出そろいました。
これから次々に、魅力的なNPU搭載パソコンが登場してくることが予想されます。
有名パソコンメーカーのNPU搭載ノートパソコンについてご興味のある方は、本サイトの以下の記事をご覧ください。
Copilot+ PCの機能
ここまでの解説で、Copilot+ PCがどのようなものであるか、なんとなく掴めたと思います。
本章では、Copilot+ PCの機能、どのようなことができるのかについて、解説していきます。
Copilot+ PCの機能
現在、Copilot+ PCで利用できる主な機能は、以下の6つです。
- ライブキャプション
- コクリエーター
- 自動スーパー解像度
- Windowsスタジオエフェクト
- イメージクリエーター/リスタイル
- リコール機能
順に説明していきます。
ライブキャプション
パソコン内部の音声出力を、リアルタイムに翻訳して画面上に出力する機能になります。
この機能自体は、すでにWindows上のアプリに搭載されているのですが、Copilot+ PCでは進化しています。
世界40か国以上の言語を英語に翻訳し、画面上に表示されます。翻訳の対応言語は今後増えていくはずです。
さらにAI機能を使用したライブキャプションは、アプリの外部で動作するため、翻訳機能が無いアプリに対してでも利用可能なんです。
また、NPUを使用していますので高速な翻訳が可能です。
コクリエーター
コクリエイターは、Windows標準機能のお絵かきソフトであるペイントで使える画像生成AI機能です。
言葉を入力して画像を生成するのではなく、言葉と手書きの絵を入力してAIが絵を作るソフトウエアになります。
言葉だけで描きたい絵のイメージを表現することが苦手な方には、お手軽に使えて良いかもしれません。
自動スーパー解像度
自動スーパー解像度は、ゲーム向けの機能でして、搭載しているGPUの性能が低いためにゲームの描画設定を低画質モードに設定していたとしても、NPUの力で画像を補完して高い解像度で表示してくれる大変ありがたい機能です。
NPUは、GPUをグレードアップさせることも可能なんですね。
Windowsスタジオエフェクト
Windowsスタジオエフェクトは、Webカメラやマイクから入力された画像や音声に対して、背景ぼかしやエフェクトを付与することができる機能です。
現在でもZoomやTeamsなどのWebミーティングアプリで背景ぼかしなどは可能ですが、AI機能を利用することによって、より高性能で高品質な映像になります。
またWindowsスタジオエフェクトは、カメラやマイクの入力をハードウエアレベルで処理していますので、背景ぼかしやエフェクト機能の無いアプリでも利用することが可能です。
イメージクリエーター/リスタイル
イメージクリエーターは、Windows標準機能のフォトの新機能になります。
現在すでに利用可能なイメージクリエーターはクラウド型生成AIですが、ここでご紹介してますのは、パソコン内のNPUを使用したローカルの生成AI機能です。
ただし、ローカルで画像を生成しますが、その前にMicrosoftによる入力データの有害性チェックが入ります。
イメージクリエーターは言葉を入力して画像を生成しますが、既存の画像や写真などを入力して画像を生成するリスタイルという機能も利用可能です。
リコール機能
リコール機能は、Windows上に表示された画面の内容を定期的に記録して、必要な時に過去の状態を検索することができる機能です。
記録する内容は、画像データと画面上の文字情報のデータになります。検索するときは言葉を指定して行いまして、結果はその時点の画面の内容です。
過去の操作をさかのぼれる手段があるのは、とても頼もしいですね。
以上の6つ以外にも、現在人気のある有名メーカーのアプリをCopilot+ PCと連携できるようにアップデートして、AI機能を融合させた全く新しい新機能が使えるようになってくるそうです。
Copilot+ PCを選ぶ際のポイント
Copilot+ PCの選び方は、基本的には今までと同じ考えで良いと考えます。
まずは、パソコンの利用目的を明確にして、その目的に合った形状やスペック、付属機器などを選んで、CPUやGPUなどのパワーを決めます。
あとは、欲しいパソコンのグレードでNPUが搭載されている機種を各メーカーで比較検討します。
NPUが搭載されているCPUは性能が高めのものが多いですので、事前に決めたグレードよりも高めのパソコンを選ぶことになる場合があると思いますが、そこは本体価格と相談になるでしょう。
その中で、ポイントとなる点を2つほど挙げさせてください。
それは、「内蔵メモリ量」と「CPUメーカー」です。
内蔵メモリ量を決めるポイント
NPUを利用した様々なアプリやサービスの内容を見ていますと、内蔵メモリを多く消費するものが目立ちます。
これは、AI処理を効率よく行うためには、AI機能を常に内蔵メモリ内に常駐させたまま実行したほうが良いからでしょう。
場合によっては、10GB以上もの内蔵メモリを使用するAI機能もあるようです。
これまでは、普段使いパソコンの内蔵メモリは8GB、同時に複数のアプリを多用する場合や画像処理を快適に行いたい場合は16GB以上がおすすめでした。
でもNPU搭載パソコンでAI機能を快適に使用する場合は、ワンランクアップさせた方が良いと考えます。
つまり、普段使いのNPU搭載パソコンは16GB、同時に複数のアプリを多用する場合や画像処理を快適に行いたい場合は32GB以上が良いと思います。
内蔵メモリ量をワンランクアップさせるには、メモリ代として1万円前後高くなりますが、購入したパソコンで少しでも長くAI機能を利用したいのであれば、安い投資だと考えます。
CPUメーカーを決めるポイント
現在、NPUを内蔵したCPUのメーカーは、IntelとAMD、あとはQualcommがあります。
IntelとAMDに関しましては、どちらを選んでも好みの問題で良いのですが、Qualcommの場合は事前に良く確認が必要になります。
その理由は、CPUの構造の話しになります。
パソコン用のCPUは、その構造で分類しますと、x86系とARM系の2つがあります。
IntelとAMDはx86系で、QualcommはARM系になります。
構造が異なりますと、OSであるWindowsも異なってきます。
Qualcomm製のCPUを搭載したパソコンのWindowsは、ARM版のWindowsを使用する必要があるのです。
一般的なアプリはWindows上で動作しますので、x86版であろうがARM版であろうが、ほとんどの場合は動作します。
しかし、アプリの中には性能をアップさせるためにWindowsを通り越して、直接ハードウエアに接続するアプリもあったりします。
そのようなアプリは、x86版のCPUを前提に作られることがほとんどですので、ARM版Windowsでは動作しなかったりするのです。
ですので、QualcommのCPU(Snapdragon)を搭載したパソコンを購入する場合は、ご自分がやりたことが可能なのかについての事前確認がとても重要になってきます。
でも、どんなに確認したとしても、3年先5年先にどのようなアプリが使いたくなるかなんてわかるはずないですよね。
とはいいましても、Windows標準機能だけを使う分には、まず問題はありません。
まとめ
本記事で説明した内容を、まとめてみます。
- Copilot+ PCとはMicrosoft社が提唱している新しいパソコンの規格で、NPUを搭載したAI PCのこと
- NPUはAI処理を得意とするプロセッサーで、AI処理のパフォーマンスをアップさせることにより、今まで以上にAIを現実的にする
- AI処理をパソコン内で実行するため、情報漏洩のリスクが減る
- インターネットを介する頻度が減るため、AI処理のパフォーマンスがアップする
- AIシステムが自分専用になるため、自由なカスタマイズが行える
- CPUやGPUでAI処理を行うより、パフォーマンス的にも電力消費的にも有利になる
私の現在のAIの使い方は、パソコンで行う作業の補助をチャットボットにやってもらうことがほとんどです。
自分では考えつかなかった案を提示してくれたり、作業項目の精査など、非常に助かっています。
でも、プライバシーに関することはプロンプトに極力入力しないようにしているため、入手する回答は一般的な内容にとどまってしまうことにストレスを感じています。
今後NPUがより強化されて、AIを今以上に自分専用の相棒のように使えるようになる時代がやってくるでしょう。
例えば、パソコンの使い方の傾向(チェットボットへの質問内容など)を学習して、自分の思いもしなかったことをAIの方から精度の高い内容で提案してくれたらありがたいですね。
Copilot+ PCはパソコンの大きな転換期を作り出すと思いますので、私も時代の流れに遅れないようにしたいと思います。
パソコンメーカー各社が今後発売してくるNPU搭載パソコンを別記事で解説しておりますので、よろしかったらご利用ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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